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硬水
平成26年10月8日
HARD WATER

Oct.8 2014



 
最近、アメリカ疾病予防管理センターが
水道水が飲める国は世界中に24か国あると発表した。
かつては7か国だとか11か国だとか言われていたが、
今世紀になってポーランド等の中欧諸国が、
アジアでも韓国、ブルネイなどが水道水を飲める国になった。
水道水がそのまま飲めるというのは大変便利でありがたいことだ。
しかし、欧米人は飲める水道水が目の前にあるにもかかわらず、
わざわざペットボトル入りの市販の水を買って飲む人が多い。
なぜだろうか。
実は、水道水には硬水と軟水の別がある。
日本は軟水で欧米(オーストラリア・ニュージーランドも含む)は硬水だ。
韓国は硬水よりの軟水だそうだ。
では、軟水と硬水ではどう違うのか。
とりあえず、まず硬水を沸かせて見てみよう。




これから沸かせます。
 

沸かせた湯を見ると白濁している。
 

しばらく静かにしておくと、徐々に透明になってくる。
 

しかし、何か沈殿している。
 

 

もう一度沸騰させると、
 

更に沈殿物が増す。
これが硬水たるゆえんである。 
硬水は、
カルシウムイオンやマグネシウムイオンが多量に含まれている水を言う。
逆のものは軟水という。
英語では hard water と直訳されているが、
ご飯など硬くする成分を含んでいるためにそういわれる。
そのほか、豆を煮ると豆が固くなる水とか、
絹を精錬するとき絹が固くなる水とも言われてきた。
食べ物だけでなく、
髪を洗うと髪質も硬くなる、肌荒れは起こす。 
硬水を沸騰させれば、沈殿物が生じる。
硬水に含まれていた塩類が析出するのである。
実験ではそれがポットの底に沈殿しているのが、よくわかる。
さらに沸騰させれば、沈殿物は、さらに増える。
こんな湯でコーヒーや紅茶を入れても美味いはずがない。
衛生上は飲める水であっても、
ペットボトルの水を買う理由がここにある。
石鹸の泡立ちも悪く、洗車してもすぐに拭き取らねば白い斑点となる。 
また、硬水に慣れない日本人は人によって下痢することがある。
ようするに水が合わないのである。 
日本の水道水は世界一安全で美味いのである。
 



≪参考≫
アメリカ疾病予防管理センター発表の水道水が飲める国(緑)と飲めない国(赤)
 



 
≪それから1年半後≫

ポーランドの水道水は、まずくても衛生的は飲めるということなので、
約10ヶ月飲んで、平成27年7月に帰国した。
実は、その帰国の5年ほど前にピロリ菌検査で陽性、投薬でピロリ菌を退治したことがあった。
しかし、そのときから5年ほど経過したら検査するようにいわれていたので、
帰国後すぐに、ピロリ菌の再検査を受けた。
ピロリ菌は胃カメラを飲まなければならない。その結果、とんでもないことが判明した。
ピロリ菌は陰性、癌細胞もないが、胃も食道も変色して、食道は真っ白だという。
医師は、私が完全に病気だという。私の体がおかしかっただろうといわれた。
何でこんなになるまで放置したのだとも言われた。病名は胃炎、逆流性食道縁だった。
確かに私の体はおかしかったが、痛みはないし、なにがなんだかわからなかった。
年取るとはこういうことかもしれないとも思ってもいた。
尾篭な話ではあるが、誰かが書き残して、後輩たちの道しるべにしなければならない。
そういう思いで包み隠さず記録しておくことにした。
まず、排便であるが、1日に6回も7回もトイレにいかなければならなくなる。毎日である。
回数的には特に午前中と夕方が多い。少しづつではあるが、毎回出る。
一番辛かったのは、便意が突然くるのだ。
その便意がくれば、我慢ができない。すぐに排出しなければならない。我慢も1、2分のものだった。
外出時には常に便所の場所を意識しておかなければならないし、
携帯トイレ(ナイロン袋のようなもの)も持参していた。それでももらしたことが何回かある。
小便は、就寝時にまるで目覚まし時計でもかけていたかのように、
2時間ごとに目が覚めてトイレにいっていた。頻尿だ。睡眠不足にもなる。
胃のあたりには重たいような違和感があった。
放屁とゲップは日常的に出ていた。
放屁も突然来るので、我慢ができず授業中にしたこともある。
そのときは「申し訳ない!」と敬礼のように手を大きく額に近づけて大声で言えば、
みんなニコニコして許してくれてはいた。
ゲップは日本人はあまり気にならないので、無意識に出るがままになっていたのだろう、
あるとき学生から、
「先生、大変失礼な話ですが、ゲップはしないほうがいいですよ」と注意されたことがある。
 「出てましたか?」「出てました!」と。自分では気がついていなかった。
さて、これらの原因は何であるか?医師と相談した結果、硬水じゃないかと仮説を立てた。
その後、昨年11月ごろ、私はフィリピンに来ていたが、
ジェシュフ大学の後任者のブログを見ていたら、最近腹の調子が悪くて、というくだりがあった。
早速メールした。硬水が原因と思われるので、水道水を飲まないように、
料理の水も水道水は使わないように、と。
その後、後任者の体調は改善した。やはり、硬水に問題があった。
人間の身体の大部分は水でできている。その水はどんな水なのか。
ポーランド人の身体はもともと硬水でできている。日本人は軟水でできている。
だから、ポーランド人は硬水を飲んでもなんともないが、日本人が飲み続けると大変なことになる。
水道水の沸騰したときに出るあの白い物質が食道や胃を覆うのだ。
これでは永遠に日本人はポーランドの水道水は飲めないだろう。
ポーランド人は硬水の害がないから、安心して日本人に水道水を勧める。
悪気はまったくなく、親切心からであるが、
ポーランド人にもポーランドの水はものすごい硬水だということを認識してもらいたい。
ところで、
私の病気のほうはどうなったか。今でも毎日小さなゲップが日に100回以上は出る。
その他の症状は、とっくの昔に治って快適な生活をおくっているが、
小さなげっぷでも止まるまで投薬しようと思っている。
すでに、10ヶ月投薬したことになる。
また、硬水はポーランドだけのことではなくて、ヨーロッパはほとんどの国が硬水である。
アメリカも州によって硬水のところがある。気をつけていただきたい。
このレポートが、海外赴任者の一助になれば幸甚だ。

(平成28年5月3日)

 

≪それから又1年半後≫

ピロリ菌検査と称して再び胃カメラを飲んだ。
逆流性食道炎がまだ完治していないというのが、自分でわかっていたからだ。
以前の検査結果では胃も食道も真っ白だった内部は、
ほとんど元に戻っていたが、まだうっすらと白くなっている部分が少しあった。
また胃に隣接した食道は少し赤くなって逆流しているのがはっきりと認められた。
やはり完治していなかったが、大きな問題ではないと担当医はいった。
ある意味ではほっとした。
以前服用していた薬は強い薬だったので、あれ以来ストップしていたが、
現状に見合った新しい薬を飲むことにした。
それにしても硬水の害はきついものだ。
ヨーロッパは硬水の台地である。
水の代わりにワインやビールを飲む理由が分かってくる。
発酵させれば、ミネラルが中和して安全な飲み物になるのである。
沸騰させれば白濁するような水では、日本料理の澄まし汁は作れない。 
西洋料理の不透明のこってりとしたスープを見れば、なぜそうなるのかが分かってくる。
また、同じ日本国内であっても関西と関東では味付けが変わってくる。
関西も関東も軟水ではあるが、
関東ローム層を土台にしている関東は、硬水よりの軟水になっている。
このことを理解すれば、関東と関西のうどん汁の違いの理由もわかってくる。
中国も硬水である。蒸したり油でいためる料理が多くなるのは当然かもしれない。
また、ヨーロッパの濃いコーヒーは、アメリカに渡って薄くなった。
アメリカは軟水の国である。軟水が薄いアメリカンコーヒーにすることができたのである。

(平成29年11月18日)

 

≪それから又1年半後≫ 

この年の3月、ハノイ滞在中に、胸に違和感があった。
それは3週間ほど毎日、常時続いたので、5月に帰国して、胃カメラ検査を受けたが、
映像を見た医師は「綺麗になった」と言ってくれたが、検査終わって、「確かにまだ軽い胃炎は残っているが、
これで圧迫感が出てくるとは考えられない」というのもであったが、胃炎の薬はもらってきた。
振り返ってみれば、なんと5年近くも治療していることになる。
確かにゆっくりゆっくりではあるが改善しているのが自分でもわかる。
胸の圧迫感はその後、愛媛大学病院で精密検査した結果、
動脈硬化があったので、カテーテル手術でステントを留置した。

(令和元年5月16日)






 
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