Produced & Photographed by Matsutora
ポーランド人の日本旅館
平成２６年６月２３日
愛媛県南部に宇和島市がある。
宇和島市は宇和島城を中心に発展した闘牛や真珠養殖で有名な旧城下町である。
かつて、「世界の中心で愛を叫ぶ」という小説が大ヒットしたが、
その中心舞台こそ宇和島である。
映画のロケは徳島県の庵治町で撮影されたが、
原作である小説の舞台は宇和島である。
ただし、小説の中には地名の類は一切出てこないのだがヒントはある。
僕の街には�‥啓薐佞�ある、�⊃綮差盥擦�あると書かれている。
日本には江戸時代以前に築城された現存天守こそ１２しかないが、
復元天守、復興天守、模擬天守も含めれば結構な数の天守閣がある。
水産高校も各県に一校づつ開校されているが、
天守閣と水産高校を兼ね備えた街は限られてくる。
宇和島市を含め２、３の街しかない。
��のヒントがある。
僕の街の郊外では��真珠養殖をしているとある。
この�，�ら��までに該当する街は宇和島市でしかありえない。
宇和島城は現存天守閣であり、
宇和島水産高校は、
かつてハワイ沖で米国潜水艦と衝突し沈没した「えひめ丸」の学校であるが、
宇和島とハワイはその悲劇を乗り越えて新たな友情が芽生え,
すでに１０年前に姉妹都市締結をしている。
現在は民間あげて密接な友好関係が両都市間で展開されている。
宇和島市は宇和海真珠の集積地として日本一の生産量を誇っている。
そのような宇和島市にポーランド人が支配人の老舗旅館があるという。
木屋旅館である。
明治44（1911）年、創業。政治家では後藤新平、犬養毅、
作家では司馬遼太郎、吉村昭、五木寛之のほか、国語学者金田一春彦らが宿泊した。
明治時代の旅籠の面影が残る木造2階建て。
平成7（1995）年、惜しまれつつ廃業したが、宇和島市に買い取られ
平成24年(2012)春、新しい滞在型の観光名所として再生された。
再生プロジェクトメンバーには
「ルイ・ヴィトン京都店」を手がけた若手建築家、永井祐子氏や
俳優で映画監督の伊勢谷友介氏が起用されている。
平成２６年４月２５日付けで、木屋旅館が国登録有形文化財に指定された。
旧宇和島市の入り口にある歓迎オブジェ。
平成の町村合併で現在の境界線は１０�劼曚彬綿�になっている。
宇和島の観光コースに入っている真珠会館。
真珠でできた宇和島城
大粒になるとこんなお値段です。
比較的手ごろな価格の真珠もあります。
木屋旅館。一日一組限定、つまり全館貸し切り状態です。
内側から見た玄関
梁を見せるために天井板を取り除いて照明も施している。
畳部屋の一部の床にアクリル板が敷かれている。
厚くて丈夫なので子供が飛び跳ねても大丈夫。
一階から見上げた写真。建物自体を楽しめるよう改築されたようだ。
２階の床にはアクリル版が敷かれているので、
一階から２階を通り越して屋根裏まで見える。
建物がロ字形になり中央に中庭がある。
中庭
ハート形の手水鉢があるのは、
改築設計した女流建築家（永山祐子）ならではのアイデアといえそうだ。
元々は銀杏形の鉢だったそうだ。
書斎もある。
司馬遼太郎氏も吉村昭氏もここで執筆した。
吉村昭氏の書
洗面所
浴室
木屋旅館が長年かけて収集した書画があちこちに掛けられている。
こちらが木屋旅館を経営されているご夫妻。
ご主人のグレブ・バルトロメウス氏（Sales & Marketing Manager Bartholomeus Greb）と
奥様のグレブ千佳江氏（General Manager Chikae Greb） 。
バルトロメウス・グレブさんは、
１９８０年ポーランドの南部のビールの生産で知られる小都市の
ティヒ市(Tychy：人口約１３万人)に誕生、
１９８９年ベルリンの壁崩壊の年にドイツ・フライブルグ市（旧西ドイツ）に一家転住。
現在の国籍はドイツであるが、
ポーランド民族であり、グレブさんご自身がポーランド人であると認識されている。
１９８８年フライブルグ市と松山市は姉妹都市締結。松山にはフライブルグ通りさえある。
２００５年グレブさんはドイツ・フライブルグ大学から
交換留学生として愛媛大学に１年間留学し、
２００６年には、その後の妻となる千佳江さんと巡りあいながらも帰国の途についている。
２００９年再来日し、千佳江さんと結婚し、現在３歳になる娘がいる。
２０１２年グレブさんは妻千佳江さんとともに木屋旅館の支配人になった。
グレブさんは異文化体験は自国文化に対する認識をより高めることになると、
言葉も習慣も異なる日本での生活を前向きにとらえているだけではなくて、
むしろ異文化を楽しんでいる余裕さえうかがわれる。
日本語も非常に堪能で、この年月でここまでになるのは驚嘆でさえある。
奥様によると日本料理も何でも食べるという。
グレブさんからポーランドの皆様に３か国語でメッセージをいただきました。
"I travelled to the end of the world to find home,
and I wish you a safe trip too!"
"Podroz w poszukiwaniu domu zabrala mnie na koniec swiata,
i Wam zycze bezpiecznej podrozy!"
"私の故郷を見つけるために遠く離れた国に私は辿り着いています。
皆さんの人生の素晴らしい旅立ちを祈っています。”
奥様の千佳江さんからも
ポーランドの皆様へ自筆でメッセージを頂きました。
ポーランドのみなさん、なんと書いてあるかわかりますか。
翻訳しやすいようにテキストにしました。
『伝心』
ポーランドと日本を心で感じてください。
心で伝えたい二つの文化を大切に。
いつかどこかで皆様とお会いできる日を楽しみにしています。
平成２６年６月２３日
愛媛県宇和島市 木屋旅館より
グレブ千佳江
木屋旅館の前で記念写真を撮ってもらいました。
藤堂高虎築城の宇和島城。宇和島市街地のどこからでもよく見える。
木屋旅館(Kiya Ryokan)：http://www.kiyaryokan.com
その他、参考ウェブサイト多数
琥珀ブログ 平成２３年３月２０日 初製作
© 2014-2024 KOHAKU BLOG. ALL RIGHTS RESERVED.