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住居環境
平成28年6月7日
DWELLING ENVIRONMENT
JUNE 7. 2016
日本にもホームレスもいれば億万長者もいるが、
それらはほんの少数で実態は中間層が圧倒的に多い。
その中間層も、最近は貧困化が進んでいるとはいうが、
年収が10万円以下という人はいない。
フィリピンでは、2011年にアジア開発銀行が公表した資料によると、
1日2ドル未満(年間で76,650円、1ドル105円で換算)で暮らす
貧困層は3842万人と推定されており、国民の40%以上を占めている。
ホームレスも男性一人だけではなくて、
女性一人だけのこともあれば、夫婦、家族の場合もある。
年代も子供から熟年まで広がっている。
実にたくさんの人々が路上で生活をしている。
また、国有地(道路、川岸、廃線となった国鉄線路など)に無許可で
材木やトタン屋根だけで作った粗末な小屋が密集する貧困地区も
フィリピン全土に無数にある。
一般サラリーマンも古くて2階建ての住宅が密集した地域に住んでいることが多い。
それも小さな空間に多人数で住んでいる。
だが、富裕層も1000万人くらいいるといわれている。
巨大で高級なショッピングモールがあちこちにあるのもフィリピンである。
フィリピンは巨大な財閥(スペイン系か華僑でフィリピン系はない)が20くらいあって、
それがフィリピンの政財界の全てを牛耳っていいる。
それらの富裕層は高層コンドミニアムなどに住んでいるが、
実は本当のお金持ちはコンドミニアムなどには住んでいない。
「ビレッジ」という高級住宅街に住んでいる。
「ビレッジ」は広大な住宅地の全体が高い二重の塀で囲まれている。
入口にはセキュリティーがいるので部外者は入ることさえできない。
古代・中世時代のヨーロッパが町全体を塀で囲み、
入り口や城内は兵士が監視していたが、
現代のフィリピンは兵士がセキュリティーに変わっただけで、
基本的には同じで、このような「ビレッジ」も無数にある。
日本最高といわれる田園調布と比較しても、
資産的価値は田園調布のほうがあるかもしれないが、住環境は相手にならない。
巨大な住宅地全体を、巨大財閥が一組織で作っているので
都市計画が完璧にできているのである。
ビレッジの中には学校や病院だけでなくゴルフ場まであるものがある。
全く別世界が広がるのである。
治安が悪いフィリピンでは、会社でもスーパーマーケットでも学校でも
コンドミニアムでもホテルでも入口でセキュリティー・チェックを受ける。
すべてといってよい。住宅地もしかりなのである。
経済の中心都市マカティーなどは、法律で厳しく規制しているので、
それが壁のようになって、
他の無秩序で混沌とした都市とは基本的に違った都市になっている。
マニラ市をみてマカティー市を見なければ、
また、スラムを見てビレッジをみなければ、フィリピンを見誤るだろう。
フィリピンは城壁のある国である。その城壁が無数にある。
道路は公共のものである。
公共だからこそ「私」が自由に使えるという考えのようだ。
交通の要所的な駅前の路上は、市場のようになる。
左は高架鉄道駅。右は駅前百貨店「イセタン」。
日本の伊勢丹とは全く関係がない。
マニラど真ん中にでも材木とトタンでにわか作りしたような小屋が密集する。
高架連絡路から内部が見える。なんと大型の液晶テレビがあった。
こちらは、庶民のキンタ・マーケット
将来、これらの小さな商店は現代的なビルの中に入るようだ。
貝飾りが美しい
店番の人々は明るい
左の二人は大笑いしている。
「写真撮ってやって」と頼まれたので、本当に写真を撮ったら、笑いこけている。
建築中の新キンタ・マーケット
それに隣接して、粗末な小屋が密集している。
こちらは再び一般的な道路
路上での販売は、煙草でも飴でもコヒーでもバラ売りが多い。
路上や粗末な小屋に住んでいる人々にとっては、
保管に場所をとらないバラ売りが便利なのである。
しかし、単価はスーパーで買うよりも高くなる。
夜間は屋台になるようだ。
歩道上の小屋
覗けばかまどがあった。食事を作るようだ。
こちらは路上で作っている。
車道の端にある緑の籠で、
鶏を飼っていた。
通常は足を紐で結んだだけで飼っていることが多い。
街中のあちこちで飼っているので、コンドミニアムの朝も鶏の声が聞こえる。
こちらは人糞が並んでいる。
犬の糞はあちこちに転がっているが、人糞は多くはない。
川や下水にお尻を突き出して澄ますことが多いようだ。
フィリピンでは、広大な住宅地を取り囲む塀があちこちで見られる。
塀は二重になっている。
これらの高級住宅地はビレッジと呼ばれている。
ビレッジの入り口。部外者は入れない。
撮影も禁止されている。
ビレッジの入り口近くの内部の道路。
高架鉄道からビレッジ内部が見えるところがある。
木が茂った緑地に大きな家が点在しているのが分かる。
実は、ある方の紹介でビレッジ内部の写真も撮っていたのだが、
残念ながらパソコンの故障でこれらの画像も壊れてしまった。
では、グーグルマップでビレッジの内部を見てみよう。
ビレッジを離れて、再び一般街路。
真夏にはこのような真っ赤な花が咲く。
フィリピンは年中夏であるが、
5月は一番暑い季節で真夏といわれ、38度以上、40度を超えることもある。
参考1:マカティーのビル群。先進国と同じ都市環境である。
参考2:地球幸福度指数
自分が幸福なのかどうかを表した幸福度指数というのがある。
それによるとフィリピンは17位、日本は95位である。
つまり、「自分は幸福だ」という人がフィリピンは日本よりも圧倒的に多い。
フィリピンはカトリック教徒が80%を超える。
貧しさに甘んじる宗教の影響が大きいのかもしれない。
琥珀ブログ 平成23年3月20日 初製作

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