Produced & Photographed by Matsutora

 

砲丸の木
令和3年11月17日

CANNONBALL TREE
November 17, 2021




砲丸の木の実は、睾丸がぶら下がったようにも見えるし、
砲丸が実ったようにも見える。
そして、この世のものとは思えない花を咲かす。
この木は南米のギアナ原産である。
睾丸のような果実に触ってみると、暖かくて柔らかくはない。
冷たくて硬くて重い金属製のようにさえ思える。
見た目は睾丸でも、感触は砲丸である。
ところが、この木は東南アジア諸国ではまったく別の顔を持っている。
仏教の聖木になっている。
釈迦は沙羅双樹の木の下で涅槃に入ったという伝承がある。
そのために沙羅の木は、仏教では聖木になっている。
この沙羅の木はネパール山麓に広がっているが、残念ながら日本では育たない。
沙羅の木に葉がよく似ていて同じ季節に白い花を咲かせる夏椿を
日本仏教会が沙羅の木の代用にしているという話しは日本でよく知られている。
だが、東南アジア諸国では砲丸の木が沙羅の木になっている。
タイでもカンボジアでもベトナムでもそうである。
沙羅の木と砲丸の木とでは、葉も花も実も樹形も全く異なる。
似ているところは何処もない。そもそも砲丸の木は南米渡来のものである。
それがどうして古代インドで発祥した仏教の聖木になったのか、
誰に聞いても明確な答えはないが、タイの寺にもベトナムの寺にも、
境内に砲丸の木が植えられて、この木が沙羅の木であると樹名板に明記されている。
私見であるが、砲丸の木は、花の付き方が風変わりで、
華美な花を咲かせて、異様な形の果実もつける。
南米伝来以前の旧大陸では、全く未知の見たことも聞いたこともない木であったが、
人心を惹きつける魅力度が高く、存在感も素晴らしい。
「これはこの世の花ではない。あの世で咲いている花なのではないか」
と人々が考えても不思議ではない。
そう信じ込ませる魔力をこの木は持っている。
人々のこの畏怖の念が、この木を聖木「沙羅の木」にしたのではないかと思っている。
次の写真は同時期に撮影したものであるが、紅葉していたり、
していなかったり、花が咲いていたり、咲いてなかったりと木によって状態が違う。





















参考(ホーチミン市最古の寺ヤックラム寺、境内にある砲丸の木に沙羅の木と明記されている)
http://kohaku269.sakura.ne.jp/blog29.html
 












© 2020-2030 KOHAKU BLOG. ALL RIGHTS RESERVED.